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停滞気味で申し訳ない、こんばんわ、トマトです。
とりあえず、お茶にごし程度に。まだヴェルド君が入っていないころ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

平日朝。まだ出勤時間にも早い、早朝六時からでも、神羅タークス室では働く者がいる。
言わずもがな、ヴィンセント・ヴァレンタインその人である。溜まりにたまった、というより溜めにためられた事務仕事を片付けるのが、彼のここ数週間の主な仕事である。豪快なことが好きな反面、タークスメンバーは皆こまごましたことが嫌いなのだ。
しかし、本気でやれば人二三倍有能な彼である。一晩寝ずにやったおかげで、あらかたの仕事は終えてしまっていた。あとは主任のチェックを通せば完璧である。
ささやかな達成感とともに、束になった書類をまとめて、クリップで分類し、主任の机に置こうと立ち上がった時である。
ヴィンセントは、主任の机の上を見て、絶句した。

見られてる。

何にって、サボテンに。

ちなみにアースティン主任の数少ない趣味は、サボテン愛好である。
(サボテンに限り)園芸も好きなら、ただ眺めているだけで幸せになれるという、いささか残念だが、平和的な趣味なのだが。その趣味は確実に彼の日常に勢力をのばしてきており、最近では大小合わせて十個近くのサボテンの鉢植えが、彼の机の面積の半分を占めるという事態に陥っているのだ。(残りの半分は懐メロカセットと、よくわからない食玩と、仕事書類で等分している)。

さて話をもどそう。机の上にいくつかおかれたそのサボテンの植木鉢の中から、ひとつが、じっと黒くつぶらな瞳でこちらを見ているのだ。

(いや待て、落ち着け私)

ミスターリアリストを目指すヴィンセントは、冷静になって考えてみた。
そうだ、自分は徹夜で疲れている。サボテンにマジックで書いたような黒丸の目やら、縦に長い楕円の口やらは、主任が悪戯に書いただけのことである。
ヴィンセントはやや自嘲的な笑みを浮かべ、書類をバサッと机の上に置いた。

【クルッ・・・クルリ】

顔の描かれたサボテンは、一瞬音に驚いたかのようにそちらを振り返ると、またヴィンセントを見つめた。

「「・・・・・・・・」」

二人は数秒間見つめあった。
ヴィンセントは深く息を吐くと、来客用ソファに寝そべって、不貞寝を決め込んだ。



誰かに呼ばれたような気がして、ヴィンセントはしぶしぶ夢の中から起き上がった。

「なんだ?」

見れば、アルルカンが少し離れた位置から、機動隊が突入するときに使う特殊アクリル板のついた盾をしっかり構えながら、自分を呼んでいた。立てこもり犯か、私は。
アルルカンはヴィンセントが起きたことを確認すると、ようやく盾を下ろした。そして、主任の机の方向を指さして、緊張感のない声で言った。

「侵入者でございますよ」

見れば、ラファエルやレインが床にちらばった資料や食玩、懐メロカセットを拾い集めているところだった。
主任の机の上は、局地的な台風が起きたかのような惨状であった。
ヴィンセントが提出した資料は土色になって散乱し、植木鉢も残らずひっくり返っている。

「朝来たらこうなっていなのでございます。ヴィンセントさんはなにか御存じで?」
「・・・・・・さあな」

ヴィンセントはやや棒読みに言った。アルルカンが片眉を吊り上げる。

「まぁ、こうしたい気持ちもわかりますが。それならワタクシも誘っていただければ、もっと計画的に嫌がらせが・・・」
「お前と一緒にしないでくれ、深刻に傷つく」
「今のワタクシ程ではございませんよ」

しかしそれなら誰が、寝ているヴィンセントさんの隣で狼藉など働けましょうか?と、アルルカンは割と真剣そうに言った。
ヴィンセントはこめかみに手をやりながら、ソファから立ち上がった。

「わー土だらけ。あ、先輩おはようございます」

ラファエルが資料をはたきながら、挨拶した。ヴィンセントも、おはようと返しながら、地面にしゃがみ込む。
床には、転々と丸い土色の跡が残っている。
ヴィンセントがそれを指でなぞると、ラファエルが控えめに言った。

「先輩、主任に対するお気持ちはお察ししますけど、サボテンには罪はないですよぅ」

レインも丁寧にサボテンの鉢を元に戻しながらうなずいた。

「ラファエル、レイン、お前達もか」

ヴィンセントは虚無感に襲われたが、疑いは晴らさなくてはならない。サボテンを整えるレインのそばに行き、鉢の数と、サボテンの数を照らし合わせてみる。

「一つないな」
「あ、本当だ。もうすぐ花が咲きそうだったのがないです」

そう、昨日顔がついていた奴がないのだ。

「・・・・・どうやら、サボテンに罪があるらしいぞ」
「へ?」
「主任は?」
「今日も出張で、帰ってくるのは午後らしいですよ」
「そうか」

ヴィンセントは床に残る土の跡を追った。
案の定、土の足跡はタークス室をでてすぐに消えてしまっていたが、あのサボテンの大きさからいって、あまり遠方へ逃げるのは不可能であろう。
まして、あのサボテンが何を捕食しているかは謎だが、植木鉢のときは葉緑体でエネルギーを作っていたはずである。(おそらく植木鉢から引っこ抜けようとしたのだろう)あれだけ暴れた後では、エネルギー不足が考えられる。

(水場か、太陽のあるところ)

それもこのフロアのどこか。
ヴィンセントはまずトイレに向かった。まさか女子トイレには入れないので、そっちに行っていたらどうしようか、とも考えたが。どうやら彼の読みは当たっていたらしい。
センサー式の手洗い場が、ひどく濡れていた。土色の水沫が、白い床を汚している。

「当たりか」

ヴィンセントはサボテンが水浴びをしたらしい水道から、一本の細い針をつまんで、踵を返した。



そいつは案外あっさりと見つかった。
朝日のあたる窓際に置いてある観葉植物の鉢、その隅を掘り起こして、体の良い寝床を作って寝ていたのだ。咲きかけだった花も無事咲けたらしく、頭のてっぺんで、鮮やかなピンクの花弁が朝日に光っていた。
丸だった眼は細められ、時折舟を漕ぐところなど、愛らしく、捕まえてしまうに少々躊躇してしまうが、一応主任の愛しい私物である。なにより、自分の疑いを晴らしたい。と、ヴィンセントは安直に手を伸ばした。
指先が緑の体に触れた瞬間、ヴィンセントは驚いて手を離した。指に激痛が走ったのだ。見れば針が深く指先に刺さっている、血が滴った。
ヴィンセントは舌打ちすると針を引き抜いた。寝ぼけたままのサボテンを前に、説教を垂れる。どうやら、彼もかなり眠いらしい。

「お前はクラゲか、寝ているくせに攻撃とは生意気な」

自分の寝ぞうを彼が知っていたら、とても口にはできまい。
ともかく、素手でつかむのを諦めたヴィンセントは、重そうな観葉植物の鉢をひょいと持ち上げた。

『・・・・・っ!!』

甲高い鳴き声はサボテンの物だったのだろうか。驚いたヴィンセントを尻目に、サボテンは土から抜け出すと、腕と足を直角に曲げた変な体勢のまま、すたこらさっさと逃げ出してしまった。

「そうか、もう充電完了か」

私はまだなんだがな。とぼんやり呟いたあと、ヴィンセントはばっと走り出した。
ヴィンセントの足は速い。それこそドスペルかライルくらいでないと、追いつくのは難しいだろうと思われるくらい早い。
しかしサボテンの逃げ足は、ザ・逃げ足と呼べるくらい別格の速さを誇っていた。一向に縮まらず、広がるばかりの距離に、タークスの貴公子は眠気を覚えながら戦慄も感じたとかなんだとか。

そのうち小さなサボテンは、登れるまいと思った階段まで、すたこらさっさと駆け上がってしまう。
ヴィンセントもあわてて上ったが、階段の先に、緑のあん畜生の姿はなかった。

「・・・・・サボテンステーキって美味しかったけな」

やや座った目つきのまま、ヴィンセントはあたりを捜索した。しかし、あらかた探しても、奴の姿は見つからなかった。残るは、彼の父グリモアの研究室を残すのみである。
まさかいるまい、と思いつつ扉を開くと。

「やぁ、ヴィンセント。おはよう」
『・・・・・!(片手をあげて、キュキューと鳴いた)』

グリモアはビーカーにコーヒーを、サボテンは水の入ったビーカーにガラス管を使い。
彼らは実に親しげにお茶会を開いていた。

懐中時計をもったウサギはどこだっけな。にやにや笑いの猫も探さなくては。あぁ、今日は誕生日じゃないから、パーティーがあるんだっけ。

くらり、とヴィンセントは意識が遠のいた。

「あぁ、ヴィンセント。紹介しよう、現マルネラの孫娘で、シシーちゃん」

グリモアはにこやかに、サボテンを息子に紹介した。

「親父、サボテンって喋ったっけ?」

学校じゃ習わなかったな。とヴィンセントは、夢の世界に片足を突っ込みながら、ぼんやりと言った。
学校で教えてくれることなんて、たかが知れてるだろ?とグリモアは当然のように答えた。

「まぁ、全部が全部話せるわけじゃないけれど。サボテンダーの一族は話せるに決まっているさ」

ねーとやさしい笑顔を向ければ、シシーもキュキューと鳴いた。楽しそうである。

「彼女のおばあさんには前にアースティンやディーベクトともどもお世話になっていてね、その縁でアースティンが彼女を預かっていたんだけど。初めて鉢から出る所を見逃すだなんて、彼もついてないね」
「・・・・・そうか」

その時、研究室の扉がばたんと開いた。

「シシーが立ったって!?」

アースティンだった。

「うん、ちゃんと花もさいたよ」
「わー!!シシー、君やっぱり最高にかわいいよ!!」

ヴィンセントはじっと眼尻に力をこめて、上を見た。駄目だ、なんだか泣きそうだ。現実が崩壊しそうで。

「マルネラにも早速報告だね。もう二三サボテン預かっても、育てられるかも。これで夢のサボテン王国建設が・・・・・・ってあれ、ヴィンセント君大丈夫?」

サボテン王国。おそらくタークス事務所に作られるであろうその光景を思い浮かべると、ヴィンセントはなぜか可笑しくなってきた。いいじゃないか、きっと楽しかろう。トゲトゲしてて。
おかしいついでにほほ笑んだ。それこそグリモアとアースティンが一気に後退するくらい、にこやかに。

「今日はお先に失礼します。書類はあとチェックするだけですから☆」

そのままビールのCMに使えそうなほど晴れやかな笑顔のまま、ヴィンセントは退室した。



後日、タークス事務所には墨痕鮮やかに。

『二足歩行サボテン、持ち込み禁止。ダメゼッタイ。破った場合は十日間のストライキを決行します。V』

と書かれたポスターがいつのまにか貼られ。シシーは、アースティン主任の部屋に移動したという。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●
ヴィンセントがいつになくハイテンションなのは、眠いからということで。

10-2ネタと交差。マルネラはサボテンダーの族長さんです。
サボテンダーかわいいよ、サボテンダー。
10-2のジャボテンダーは針万本乱発しないところがいい。でも8の時にさんざん苦戦したのはいい思い出。

更新もう少し待っててくれるとうれしいです。がんばる、頑張ります!!
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